2017年6月25日日曜日

(相続税)相続後に売買契約解除 課税財産は残代金請求権

土地・建物の売買契約中に売主が死亡し、相続開始後に相続人がその売買契約を解除した場合、相続税の課税財産は売買残代金請求権とする国税不服審判所の裁決。
 被相続人A氏は生前、所有する土地・建物について譲渡する契約を締結しました。なお、この契約では、引き渡し期日および代金の決済期日を同18年4月末としています。その後、同18年3月にA氏が死亡したため、共同相続人であるB氏らは同18年4月に売買契約を解除。これら土地・建物を課税財産として相続税の申告書を提出したところ、「相続開始後に売買契約を解除しているから、相続財産は売買契約にかかる売買残代金請求権である」として国税当局から更正処分を受けた。

 争点は、相続人が売買契約した土地建物について、被相続人の意思で契約が解除された場合、相続財産となるのは土地建物か、売買残代金請求権か、という点です。
 当局は、「相続税は、相続開始時を課税時期とするもの」「相続発生時において土地・建物の引き渡し日、代金の決済日が決定しており、売買契約が履行されることは確実。相続発生時に土地建物の所有権が相続人に残っていたとしても、実質は売買契約にかかる残代金請求権を確保する機能を有するに過ぎない」と主張。これに対してB氏らは、「売買契約の解除権が行使されると、その契約は遡及(そきゅう)して消滅するため、残代金請求権は相続開始時には存在していない」と反論しました。

 国税不服審判所は、国税当局の主張を全面的に支持。「売買契約の解除は、被相続人から売買契約にかかる契約上の地位を承継した請求人らの意思によるものであり、売買残代金請求権は確定的に被相続人に帰属する」としました。

2017年6月18日日曜日

(法人税)資産の共同購入

青色申告法人である中小企業者が利用できる「取得価額30万円未満の減価償却資産の損金算入の特例」。取得価額が30万円に満たない減価償却資産の取得価額は一括して損金算入できるという、使い勝手の良い特例です。
 しかし、30万円を超える備品が必要となることは意外に多く、その場合は通常の減価償却資産としての取り扱いとなります。ところが、こうした30万円を超える備品でも、同じフロア内にオフィスを構える2社が共有することで、その購入費用を損金処理できるケースがあります。

 資産を2社で共同購入した場合の各社の取得価額は、その資産の持分比率に合わせて購入費用を按分した後の金額です。その金額が1社あたり30万円未満であれば、その購入にかかった費用は2社とも一括して損金に算入できます。つまり、資産を2社で共同購入することにより、同特例の30万円未満という制限を、30万円×2社分の60万円未満まで広げることができるわけです。
 ただし、同特例には制限があります。30万円未満の資産の取得価額の合計額が300万円を超えると、300万円未満の部分だけが適用対象となり、超えた部分については通常の減価償却処理をすることになります。また、同特例と租税特別措置法上の特別償却、税額控除などとの重複適用はできないので注意が必要です。

 なお、共同購入した企業の事務所が離れている場合や、一方の企業が明らかに使用できない環境にある場合は共同購入と認められないので気を付けたいところ。また、資産を共同購入する際には、共同購入する企業間で契約書や覚書を作成し、両社で保管しておくことが肝要です。こうした書類は、税務調査の際に確認されます。



2017年6月11日日曜日

(消費税)相続があった場合の消費税 納税義務の判定

相続があった場合、被相続人の事業を承継した相続人の消費税の納税義務は、特例として、次のように定められています。
(1)相続開始の年にあっては、相続人の課税売上高の有無に関わらず、被相続人の基準期間の課税売上高が1,000万円を超えていれば、相続開始の翌日からその年の末までの期間は納税義務者となります。また、(2)相続開始の年の翌年及び翌々年にあっては、相続人及び被相続人の基準期間の課税売上高の合計が1,000万円を超えていれば、その年については納税義務者となります。

◆相続財産が未分割の場合
 なお、上記(1)、(2)の特例を適用する場合に、相続により被相続人の事業を承継する相続人が2人以上いる場合に、被相続人の事業を承継する相続人が確定していない、いわゆる未分割のときは、各相続人が共同で被相続人の事業を承継したものとして取り扱われ、被相続人の基準期間における課税売上高に各相続人の民法規定の法定相続分の割合を乗じて得た金額をその相続人に係る被相続人の基準期間における課税売上高として計算することになります。

◆基準期間の課税売上高の算定は
 問題は、未分割後、分割した年の翌年の課税期間における基準期間の課税売上高を算定する場合、①実際、その期間は未分割の状態であったことから法定相続分で算定、一方、②相続財産の分割が行われた場合、その効力は、相続開始時に遡るとして、分割後の被相続人の事業を承継する相続人は、相続の開始した日に事業を承継したものとして算定する、とする説があります。

◆課税庁サイドの解釈は
 これについては、法令解釈等で示されたものがありませんが、課税庁サイドでは、相続の遡及的効力を前提として、相続の開始時点に遡って当該相続人が被相続人の事業を承継したものとして、各年の基準期間の課税売上高を計算し、納税義務を判定すべきと考えているようです。
 しかし、事業といった概念的、抽象的なものにまで「相続の遡及的効力」を拡大解釈することには違和感もあります。
 なお、既に相続財産が未分割の状態で共同事業として法定相続分により消費税の申告等の処理をしたものについては、その後 分割によって相続割合が法定相続分と異なることになったとしても、申告額等を是正するには及ばないと考えます。


2017年6月4日日曜日

(消費税)トランクルーム経営

プレハブやコンテナなどを置いて収納スペースとして貸し出すサービス。

 このサービスはトランクルームやレンタル収納スペースなどといわれるものですが、両者には業務上の明確な違いがあります。「トランクルーム」は倉庫業であり、倉庫業法に則り、倉庫業者が荷物の保管責任を負います。一方「レンタル収納スペース」はその多くが不動産賃貸借契約に基づくもの。そのため保険が付与されないことが多くなっています。
 これらのサービスは、空きスペースにコンテナを置くだけで始められるという手軽さが土地持ちオーナーにウケていますが、青空駐車場にコンテナを置いてレンタル業を始めようと思った場合、課税関係が気になるところです。
 まず、コンテナそのものは減価償却資産に該当するため、減価償却費を費用計上することができます。長さが6メートル以上となる大型コンテナの法定耐用年数は7年です。全くの青空駐車場の場合は費用計上できるものがないため、青空駐車場に比べればこの分が節税となります。

 ただし、土地の評価は、青空駐車場と同様に更地の扱いとなります。そのため固定資産税の減額などにはつながらず、また相続の際にも評価減とすることができません。
 また消費税法上、何の整備もしていない青空駐車場は「土地の貸し付け」と見なされ非課税となりますが、コンテナのスペースを貸し借りする場合には、消費税の課税対象となります。

(法人税)社宅家賃<役員>

役員に対して社宅を貸与する場合は、役員から1か月当たり一定額の家賃(以下「賃貸料相当額」といいます。)を受け取っていれば、給与として課税されません。  賃貸料相当額は、貸与する社宅の床面積により小規模な住宅とそれ以外の住宅とに分け、次のように計算します。ただし、この社宅が、社会...